モスグリーンスーツの静かな品格|ビジネスとドレスコードを揺るがす男の審美眼
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緑という色は、本来人間にとって最も親しみ深い自然の色だ。しかし、テーラードスーツの世界において、緑は長らく上級者のためのアヴァンギャルドな色とみなされてきた。鮮烈すぎるグリーンは派手に見え、チープな印象を与えかねないからだ。
その難題を鮮やかに解決するのがモスグリーンである。グレーやブラウンのアンダートーンを含んだ深くくすんだ緑は、光の当たり方によって表情を変える。室内の控えめな照明下では落ち着いたダークトーンに見え、陽光の下では美しい緑の陰影が浮かび上がる。主張しすぎない。だが、確実に記憶に残る。これこそがモスグリーンが持つ最大の強みだ。
英国のサヴィル・ロウに代表されるクラシックな仕立て屋では、狩猟着やカントリーウェアの背景を持つツイード生地として緑が重宝されてきた。都市部でのビジネスウェアがカジュアル化し、柔軟なドレスコードが許容されるようになった現在、このクラシックな色が街着として完璧な進化を遂げている。